原著
急性膵炎の病態生理 I.ショック時の循環動態
佐竹 克介, 梅山 馨
大阪市立大学医学部第1外科
急性膵炎にみられる循環障害ことに膵炎shockは,膵炎患者の予後に大きく影響するところ大であり,その病態生理を理解することは治療にもつながる大きな問題である.
本実験は,雑種成犬を用いて,自家胆汁性急性膵炎を作成し,shock時の循環動態を中心に検索を行った.平均血圧は,膵炎作成後著明に減少し,一部に犬に明らかなshock状態がみられ,同時に測定したHt値の上昇およびtotal blood volumeの減少,plasma volumeの減少を認めた.とくにI125-albuminを用いた検索にて,血中albuminの腹腔への移行が著明に認められた.膵炎作成5時間後には平均307.6 mlの腹水の貯瘤を認めた.また,膵炎作成後cardiac out-putは明らかな減少を示した.水分喪失を補う目的で生理食塩水100 ml/hrを持続点滴を施行したが血圧の維持は認められず,膵の局所血流量の改善も認められなかった.しかし,低分子デキストラン100 ml/hr点滴群では,血圧の下降はみられず,膵の局所血流量の改善も認められた.血中bradykinin量の変動は,両群とも3時間後に著明な上昇を認めた.
急性膵炎時にみられるshockはhypovolemic shockの範中に入るものと考えられるが,血中bradykinin量の上昇など種々の問題を含んでいると考えられ,これらの点について欧米の報告とともに考察を加え,一部治療の問題について報告した.
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