原著
肝胆膵手術前後における高カロリー輸液―肝障害例における血中,尿中遊離アミノ酸について
小越 章平, 竹内 英世, 碓井 貞仁, 武藤 護彦, 川村 功, 轟 健, 岡村 隆夫, 平島 毅, 小高 通夫, 佐藤 博, 岩崎 洋治1), 竹島 徹1)
千葉大学第2外科, 筑波大学外科1)
最近,診断法の著しい進歩により,肝門部胆管癌あるいは乳頭部癌などの肝胆膵系癌の適確な術前診断が可能になり,この方面の切除例が増加してきたと同時に,これらに対する高カロリー輸液を施行する機会が多くなってきた.ほとんどの例が黄疸を伴い,食思不振もあいまって栄養不良状態に陥っていることが多く,根治術例も多くの例で他の消化器外科術後よりも食事摂取の進み方も遅く,時に術後腸管出血等も経験する.
このような患者にも,高濃度ブドウ糖をベースにした高カロリー輸液は可能であり,インスリンを必要とした例はむしろ少ない.いままでのアミノ酸代謝に関する数多くの報告は,ほとんどが低カロリー輸液におけるものであり再検討が早急に望まれるところである.
必須アミノ酸液ならびにそれからフェニールアラニンを除いたもの,アルギニンを除いたもの,濃度の異なる総合アミノ酸液など5種類のものを用いて検討したが,単独投与で血中アンモニアに変化をおよぼすものも,高カロリー輸液施行中では,2 g/kg投与でも血中アンモニア,意識レベルの変化はなく,十分高カロリー輸液を維持することは可能である.肝切除後などは,必須アミノ酸のみでなく,総合アミノ酸を併した高カロリー輸液の方が,尿中での遊離アミノ酸の排出は少ないことも示唆する結果が得られた.
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