原著
外科的に摘出された胆嚢より採取された上皮細胞の細胞診的研究 II)とくに良性異型細胞について
吉原 一郎
千葉大学医学部第1外科
胆嚢癌は高率に胆石を合併しているところから,癌の発生と,胆嚢結石との間には密接な関係があるといわれる.そこで炎症,結石,胆汁などが相互に影響しているなかで,胆石症,胆嚢炎の胆嚢粘膜の変化,とくに良性異型細胞について,細胞診の立場から検討した.
良性異型細胞には,核優性,不整型の核,核縁肥厚,クロマチンは多くは微細網状でその分布は不均等,核小体の増大などの所見が得られた.これはいわゆる癌細胞判定規準からみれば,いずれも個々の所見に悪性徴が乏しく,とくにクロマチン形態に著しい.そこで細胞異型の良性と悪性との鑑別には,個々の特徴を取りあげることはもちろん必要ではあるが,その中でもクロマチンの凝集像が最も役立ち,さらに悪性の特徴が重複しているかが,重要な鑑別点となる.
すなわち良性疾患である胆石症,胆嚢炎の胆嚢粘膜には,その上皮細胞に種々の程度の異型細胞が存在している.
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