原著
開腹術後癒着障害の統計的観察
青柳 和彦, 西村 久嗣, 石塚 慶次郎, 木村 信良, 浅野 献一
東京医科歯科大学第2外科教室
近年,外科手術の安全性が飛躍的に向上するとともに,開腹術は普及し,長時間の複雑な手術症例も年ごとに増加している.他方,開腹術後に強い愁訴をもつ患者も増加し,Polysurgeryとぃわれる複雑な病態に発展するものもあるが,この方面の研究は極めて少ない.
著者らは,教室の21年間において,良性疾患の開腹術後癒着障害で再入院した延べ213例について,その臨床像を統計的に分析し,主としてPolysurgeryに至る過程を考察し,その対策について検討を加えた.
患者は20歳台が33%で最も多いが,最も重篤な症状であるイレウス症状を呈するものは男女ともに,この年代で最も低率である.入院時の診断適中率は低く,とくに女子の診断は難しい.既往手術4回以上の多期手術例も女子に多い.手術々式は約半数が癒着剥離術である.内科的治療のみで治癒したものが男女ともに約60%である.また症状の発現時期は病理組織学的にみた癒着形成の時期とは著しく異なる.これらのことは,開腹術後障害で比較的症状の軽いいわゆる癒着症患者には,心因が病態形成の主要な因子となっていることがあることを物語っている.したがって,術後癒着症には器質的な病変の追究とともに,精神面の病態を把握することが治療上重要なことである.
索引用語
術後合併症, 開腹術後障害, 癒着障害, 腸管癒着症
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