原著
消化管蠕動促進ホルモン―モチリン―と消化器外科手術に関する検討
藤本 茂, 伊藤 文二, 高橋 誠, 石神 博昭, 南 智仁, 宮崎 勝, 橘川 征夫, 赤尾 建夫, 鶴田 好孝
千葉大学医学部第1外科
消化管ホルモンの内gastric motility activating hormoneといわれているmotilinは十二指腸と上部空腸に局在しているが,種々の消化管手術後の血中motilinの消長を検討した.消化性潰瘍・胃癌症例の内Billroth I法による胃切除術を施行した場合,術直後と腸蠕動音の全く聴取し得ない時点において血中motilinは最低値を示すが,腸蠕動音が僅かに聞かれる時点においてその血中濃度は急増し,排ガス・排便の見られる術病日迄持続し,以後減少し術前値に復した.胆石症・大腸癌症例の術後の消長もBillroth I法の症例と略同一である.また,Roux-Y吻合を行った胃全摘症例の術後経過は前記の場合と異なり,腸蠕動音聴取可能時の血中濃度のpeakは著明ではなかった.以上より,上部小腸粘膜より血中に遊出したmotilinが消化管手術後の消化管の蠕動回復と密接に関係している事を推定し得た.
索引用語
消化管ホルモン, モチリン
日消外会誌 13: 1042-1046, 1980
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