原著
骨盤内後腹膜気体造影法による直腸癌の壁外浸潤の判定
貝原 信明, 木村 修, 西土井 英昭, 田村 英明, 岡本 恒之, 古賀 成昌, 田中 公晴1)
鳥取大学第1外科, 戸畑市立病院外科1)
直腸癌患者26例に対して骨盤内後腹膜気体造影法とバリウム注腸造影法を同時に行い,その所見から癌の壁外浸潤の有無を判定しようと試みた.腫瘤周囲の後腹膜腔にfree airがみられなかった8例では,切除標本の組織学的検索による壁深達度はa2またはa1であり,全例に壁外浸潤が認められ,その最長径は平均4.1 cmであった.これに対して,腫瘤周囲の後腹膜腔にfree airを認めた18例のうち9例では,壁深達度sm~pmであり壁外浸潤はみられなかった.一方,残りの9例の壁深達度はa1~a2であったが,これら症例の壁外浸潤の最長径は平均2.5 cmであり,その程度は軽いものが多かった.腫瘤の中心が前壁にあるものでは,free airの所見から壁外浸潤の有無を判定することは困難であった.以上のことから,骨盤内後腹膜気体造影法は,癌巣が後壁ないし側壁にある直腸癌症例の壁外浸潤の有無を術前に知るための,有用な検査法であると考えられた.
索引用語
直腸癌, 局所浸潤, 骨盤内後腹膜気体造影法
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