原著
定量的食道内圧測定法に関する基礎研究
遠藤 渉
東北大学医学部第2外科(主任:葛西森夫教授)
Lower Esophageal Sphincter(LES)の内圧測定法としてRapid Pull-through Technique(RPT)が用いられるようになったが,水の注入量,カテーテルの引き抜き速度,測定装置の性能などに関していまだ不明確な点が少なくなく,これらを明らかにするため基礎実験を行った.(1)犬の胸部食道に人工的な高圧帯を作製し,RPTを用いて内圧測定を行った.記録した波形の最大圧,最大圧上昇率(dp/dt)を求め,注入量,カテーテルの引き抜き速度の違いによりどう変化するかを検討し,また,最大dp/dt値は閉鎖テストの圧上昇率とも比較した.その結果によると,正確な圧波形記録を行うためには,1.0 cm/secでカテーテルを引き抜く場合,測定目標とする最大圧上昇率をa mmHg/cmとすると,閉鎖テストで2a mmHg/secの圧上昇率を示す注入量があれば安全である.(2)閉鎖テストを行い,測定装置自体の性能に影響する因子について検討した.装置の性能を上げるためには,greasingした注射器を用いたInfusion Pumpを使用し,短く,内径の小さい,硬い材質のカテーテルを用いた方がよく,装置内への空気混入は避ける必要がある.(3)人で30分間に計21回のLES圧測定を行い,一人平均37.5 mlの水を要したが,この間LES圧,血清ガストリン値に有意の変動を認めなかった.従って,この程度の水の量,測定回数はLES圧測定上支障がないものと考えられる.
索引用語
食道内圧測定法, 下部食道括約筋圧, Rapid Pull-through Technique, Infusion Rate
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