原著
膵癌,膵内胆管癌,Vater乳頭部癌切除症例の検討―とくに,進展様式と遠隔成績の相関について―
永川 宅和, 米村 豊, 山口 明夫, 小西 一朗, 上野 一夫, 滝 邦知, 萩野 茂, 小西 孝司, 倉知 圓, 木南 義男, 宮崎 逸夫
金沢大学第2外科
膵癌の治療成績向上のためには,小膵癌発見の重要性はいうまでもないが,治療の主幹となる外科的な面でも,より安全で,より根治性を高める術式の開発とともに,膵癌の進展度が遠隔成績にどのように関与しているかを知ることも必要である.
このような観点から,著者らは過去19年間に教室で経験した膵癌手術症例(乳頭部癌,膵内胆管癌を含む)250例について,その治療成績を報告し,とくに切除症例についてその進展様式と予後との関係を検討した.
その結果,腫瘍径は必らずしもその予後に影響を及ぼさず,遠隔成績に対しては,膵癌では膵被膜浸潤,膵内胆管癌や乳頭部癌では膵浸潤の程度が大きく関与した.一方,昭和49年以降段階的に拡大してきた廓清例についてリンパ節転移の頻度をみると,膵癌では91.7%,膵内胆管癌では62.5%,乳頭部癌で58.3%にあり,これらのうち,とくに,膵癌については膵頭神経叢内の神経周囲浸潤が高頻度に認められ,これらの症例の予後は不良であった.
以上より,その手術成績についてはまだ問題点があるが,膵癌手術に際しては,後腹膜廓清を含む広範囲拡大廓清術が必要であり,とくに膵被膜浸潤例では,積極的な血管合併切除術を遂行すべきであると考えている.
索引用語
膵癌進展様式, 膵癌遠隔成績
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