会長講演
高齢者胃潰瘍―とくに高位潰瘍について―
中村 卓次
群馬大学医学部第1外科
高齢者の胃潰瘍には発生部位,臨床像その他の点で特色があり,若年者とは異なる.本報告では加齢とともに増加する高位(後壁)潰瘍発生の機序を組織学的に検討した結果を若年者と対比して述べた.60歳以上の年代にみる胃潰瘍の分布は50歳末満のそれに比べ,中間常に多くなっており,幽門腺領域に占める割合がやや減少している.胃底腺領域の潰瘍発生頻度には各年代を通じて有意差を認めず,仮りに中間帯を幽門腺領域と拡大解釈すれば,高位潰瘍でも大井学説が成立する.高齢者の高位潰瘍はしばしば止血困難であり,時機を失しないうちに外科手術に踏み切る必要がある.手術方法としては最近慣用しているSchoemaker変法を映画で紹介したが,本術式が過大な胃面積の縮小をせず,術後再発や逆流食道炎のない事実なども強調した.
索引用語
高位胃潰瘍, 高齢者, 胃底腺領域, 中間帯, 幽門腺領域
日消外会誌 15: 1706-1715, 1982
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