原著
広範な神経叢郭清を伴う膵全摘術後の下痢について
松田 真佐男, 二村 雄次, 鈴木 雄彦, 早川 直和, 松本 隆利, 犬飼 偉経, 豊田 澄男, 宮田 完志, 中神 一人, 安井 健三, 長谷川 洋, 大塚 光二郎, 前田 正司, 神谷 順一, 弥政 洋太郎
名古屋大学医学部第1外科
膵全摘21例につき,術後の下痢状況とその管理法および神経叢郭清の意義につき検討した.膵頭神経叢のみ切除した前期11例では術後下痢症を認めなかったが,腹腔・上腸間膜動脈神経叢を郭清した後期10例では,全例に頑固な下痢が発症し,各種止痢剤の質と量とを使いわけての厳重な管理を要した.しかし上腸間膜動脈神経叢と密接に関係する14番リンパ節(上腸間膜動脈沿い)転移は高頻度(4例/8例)であり,腹腔神経叢への癌侵襲も2例に認められ,神経叢郭清の意義は大きいと考えられた.広範な神経叢郭清に伴う頑固な下痢は,適切な薬剤の使用でコントロールも可能であり,膵癌切除術の根治性向上のため,積極的に神経叢郭清を行うべきと考える.
索引用語
膵全摘術後下痢症, 膵頭部癌, 膵癌神経周囲侵龍, 膵癌神経叢郭清, 膵癌リンパ節転移
日消外会誌 15: 1765-1769, 1982
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