特発性内胆汁瘻の臨床的検討

石川　羊男, 嵯峨山　徹, 楠　徳郎, 山村　武平, 琴浦　義尚, 宮村　忍, 岸本　孝博, 大石　泉

兵庫医科大学第2外科教室

　1982年7月までの10年間に教室で経験した特発性内胆汁瘻症例34例の臨床像，検査，治療および予後について検討した．年齢は34歳から87歳，平均61歳と比較的高齢で，男：女は1：1と差をみなかった．病悩期間は3カ月から40年，平均8.4年と長く，過去に胆道系手術を4例が受けていた．原因は結石に起因したもの33例，術後良性胆管狭窄1例であり，対象臓器は，胆嚢―十二指腸15例，総胆管―十二指腸10例，胆嚢―結腸3例，胆嚢―総肝管3例，胆嚢―胃1例であり，ごくまれなものとして胆管―門脈，肝―気管支各1例をみた．症状は疼痛に関するものが多く，発熱，黄疸の順に多かった．4例にRaynoldsの5徴をみた．術前正診率は64.7％でERC，PTCなどの直接造影が有力な診断方法であった．34例中32例に胆管空腸吻合，肝十指腸間空腸有茎移植，瘻孔閉鎖，十二指腸乳頭形成などの原因的根治術を施行しえたが1例は合併肝癌の切除後，他の1例は肝内結石に由来する肝膿瘍に対しドレナージを行ったのみで感染症のため直死した．
　予後向上のためにはより確実な術前，術中診断と早期の原疾患に対する根治療法にあると考えられた．

索引用語
特発性内胆汁瘻, 胆石イレウス, 胆管門脈瘻

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