原著
食道癌切除例に対する合併療法の問題点
藤田 博正*, 橋本 敏夫, 野田 辰男, 丸谷 巌, 佐藤 正典, 大山 廉平, 中村 修三, 高野 真澄, 富田 濤児, 西田 一巳1), 田中 幸房2)
国立栃木病院外科, 同 病理1), 同 放射線科2)(*現産業医科大学第2外科)
食道癌切除例の合併療法の効果と副作用について検討した.合併療法の種類は頚部全縦隔照射11例,BLM投与28例,両者の併用18例の計57例である.
合併療法を行わなかった69例とその予後を比較したところ,合併療法の有無,種類による差をみとめなかった.
合併療法による重篤な副作用は9例16%にみられ,うち6例が副作用で死亡した.その種類は肺線維症5例,遅発性縫合不全2例,胃管出血2例である.
肺線維症は低肺機能のある症例に食道亜全摘術を行ない,術後に放射線治療とBLMを併用した症例に多く,肺野に照射した場合は,より少いBLM投与量で発生をみた.
遅発性縫合不全は胸壁前再建例に,術後照射5,000 rads以上,BLM 80 mg以上投与した症例にみられた.
胃管出血は胸壁前再建例で,5,000 rads以上照射した症例に発生した.
以上,食道癌切除例の合併療法として,頚部全縦隔照射とBLMの投与を試みたが,副作用が多く,必ずしも予後改善につながらなかった.とくに,術後に両者を併用することは危険と考えられる.
索引用語
食道癌合併療法, 食道癌合併療法副作用, 食道癌術後照射, 食道癌術後照射Bleomycin療法
日消外会誌 16: 1444-1452, 1983
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