肝切除後における全身血行動態および酸素需給動態に関する実験的研究

野浪　敏明, 原田　明生, 中尾　昭公, 末永　昌宏, 堀澤　増雅, 近藤　達平

名古屋大学医学部外科学第2講座

　肝切除後の全身血行動態，酸素需給動態を明らかにする目的で，雑種成犬28頭についてSwan‐Ganzcatheterを用いて実験的研究を施行した．70％肝切除後には心係数が減少し，酸素摂取量の増加は軽度であった．30％肝切除後には心係数の軽度増加，酸素摂取量の増加を示した．70％肝切除後にdobutamineを投与すると心係数の増加，酸素摂取量の増加を示した．また70％門脈結紮のみでは心係数の減少は軽度であった．
　大量肝切除後には循環抑制と酸素代謝障害が認められるが，その原因にはsplanchnic sequestra-tionによるhypovolemiaのみではなく心機能低下が関与し，よってdobutamine投与による積極的な循環改善が必要と考えられた．

索引用語
肝切除, 肝切除後全身血行動態, 肝切除後酸素需給動態, dobutamine

別刷請求先
野浪　敏明　〒466　名古屋市昭和区鶴舞町65　名古屋大学医学部第2外科

受理年月日
1984年11月6日

PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です