原著
胃十二指腸潰瘍出血例の治療方針―とくに背景因子を中心に―
福岡 秀治, 裏川 公章, 長畑 洋司, 林 民樹, 平井 康博, 中本 光春, 松井 祥治, 熊谷 仁人, 中山 康夫, 香川 修司, 高田 孝好, 斉藤 洋一
神戸大学医学部第1外科
出血性胃十二指腸潰瘍75例の治療成績から予後に影響を及ぼす背景因子について検討を加えた.潰瘍入院総数に対する出血率は22.4%で,手術の内訳は緊急32例,待期27例で,死亡率は緊急21.9%,待期3.7%と緊急の予後が著しく悪かった.また加齢につれて死亡率は上昇し70歳以上の高齢者では19例中6例(31.6%)であった.予後に影響を及ぼす重要な背景因子は年齢と併存症で,シメチジン出現以後,年度別の出血例は減少したが,入院数に占める出血率には変化なく,緊急手術率は前期に比べて増加した.
従って,併存症を有する高齢者に対しては保存治療に固執することなく手術適応を考慮して手術時期を失しないよう迅速に対処することが必要である.
索引用語
出血性胃十二指腸潰瘍, 出血性潰瘍の予後因子, 高齢者潰瘍, 出血性ショック, 広範囲胃切除術
日消外会誌 18: 1600-1608, 1985
別刷請求先
福岡 秀治 〒650 神戸市中央区楠町7-5-1 神戸大学医学部第1外科
受理年月日
1985年3月13日
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