原著
十二指腸切除の胃酸分泌,血清gastrin,血清secretinに及ぼす影響と,膵液,胆汁の吻合部潰瘍に対する抑制効果の実験的検討
森本 洋一
奈良県立医科大学第1外科(指導:白鳥常男教授)
膵頭十二指腸切除術,膵全摘術後に頻発する吻合部潰瘍の発生因子を解明する目的で,イヌにHeidenhain pouchを作成し十二指腸切除を施行,酸分泌,血清gastrin値,血清secretin値を切除前後で測定しその変動を追究した.更に膵液,胆汁による中和作用の潰瘍発生に対する抑制効果をみるために十二指腸切除後に膵液,胆汁を胃空腸吻合部近傍の空腸にdiversionした群と,回腸末端にdiversionした群の2群を作成し吻合部空腸の形態学的観察を行った.
酸分泌は両群ともに十二指腸切除後に顕著な増加がみられた.血清gastrin値は両群共にほとんど差はなかったが血清secretin値は明らかに両群共に切除後に増加した.吻合部の観察では空腸にdiversionした群では1頭にだけ,回腸にdiversionした群では全頭に潰瘍がみられ,膵液,胆汁による中和作用の重要性が示唆された.
索引用語
十二指腸切除と胃酸分泌, 膵液, 胆汁による胃酸の中和, 吻合部潰瘍, 血清gastrinと血清secretinの変動
日消外会誌 18: 1609-1619, 1985
別刷請求先
森本 洋一 〒634 橿原市四条町840 奈良県立医科大学第1外科
受理年月日
1985年3月13日
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