高度障害肝に対する膵ホルモンの有効性に関する基礎的研究―Dimethylnitrosamineラット硬変肝肝切除後の残存肝に対する膵ホルモンの有効性に関する実験的研究―

吉川　高志

奈良県立医科大学第1外科（指導：白鳥常男教授）

　硬変肝肝切除後の残存肝の機能賦活ならびに再生を促進させる治療法を探究する目的で，Dimethylnitrosamineラット硬変肝を作製し，その病態を検索するとともに，70％肝切除を行い，Insulin 0.5 U/kg/dayおよびInsulin 4 U/kg/day＋Glucagon 2 mg/kg/dayを門脈内に持続投与してその効果を検討した．肝組織学的検索，肝ATP含量および血液生化学検索からは両組成液の効果はみられず，DNA合成能からMaddenのGrade（1＋）およびGrade（2＋）でInsulin 0.5 U/kg/dayが，Grade（2＋）でInsulin 4 U/kg/day＋Glucagon 2 mg/kg/dayがそれぞれ有意の再生促進効果を示し，また肝切除後の生存率においても両組成液がGrade（2＋）で良好な成績を示した．このことは両組成液が硬変肝肝切除後の有効な術後療法となることを示唆するものである．

索引用語
Dimethylnitrosamine硬変肝, 硬変肝肝切除, 肝切除後肝再生, Insulin門脈内補充療法, Glucagon門脈内補充療法

別刷請求先
吉川　高志　〒634　橿原市四条町840　奈良県立医科大学第1外科

受理年月日
1985年5月15日

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