肝細胞癌に対する術前経皮経肝門脈枝塞栓術とその意義

木下　博明, 酒井　克治, 広橋　一裕, 街　保敏, 井川　澄人, 山崎　修, 鄭　徳豪, 福嶋　康臣, 久保　正二, 松岡　利幸^1）, 中塚　春樹^1）, 中村　健治^1）

大阪市立大学医学部第2外科教室, 同　放射線医学教室^1）

　肝細胞癌の元凶ともいえる門脈内腫瘍栓の対策として経皮経肝門脈枝塞栓術（percutaneous trans-hepatic portal vein embolization以下PTPE）を考案し，それを肝細胞癌17症例の術前に行ったのでその手技と成績を報告した．PTPE後門脈圧の亢進と多少の肝機能障害の出現をみたが，PTPEは動脈塞栓術（transcatheter arterial embolization以下TAE）に比べ安全であった．また切除標本の塞栓状態と組織学的所見からみて塞栓物質としてリピオドール混入フィブリン糊が現在最も適していると考えられた．肝切除前に行われるPTPEはTAEの抗腫瘍効果を増強させ，肝内転移の防止や肝切除後の肝再生ひいては手術適応の拡大にも有用であると考えられた．

索引用語
肝細胞癌, 門脈内腫瘍栓, Percutaneous transhepatic portography, リビオドール混入フィブリン糊, 経皮経肝門脈枝塞栓術

別刷請求先
木下　博明　〒545　大阪市阿倍野区旭町1-5-7　大阪市立大学医学部第2外科

受理年月日
1985年1月19日

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