原著
迷走神経肺枝と気管支動脈を温存した胸部食道癌のリンパ節郭清術
藤田 博正, 川原 英之, 日高 正晴, 溝口 義人, 徳永 裕之, 吉松 博
産業医科大学第2外科学教室
胸部食道癌切除術に際し,右迷走神経肺枝と右気管支動脈を積極的にのこす呼吸機能温存手術を12例に行った.この術式を施行した症例は他の症例に比べ,肺合併症や手術死亡が減少する傾向がみとめられるのみならず,いわゆる拡大リンパ節郭清例に再々みられる術後の著しい呼吸機能の低下を軽減する効果がみとめられた.しかも,この手術によって,上縦隔,とくに気管分岐部周辺のリンパ節郭清が不十分になることもなく,短期的ではあるが,予後の差もみとめられなかった.したがって,呼吸機能温存手術は,poor risk例のみならず,拡大リンパ節郭清術や重要臓器合併切除術においても,採用されるべき有用な術式と考えられる.
索引用語
食道癌リンパ節郭清術, 食道癌術後肺合併症, 迷走神経・気管支動脈温存食道手術
日消外会誌 19: 2003-2009, 1986
別刷請求先
藤田 博正 〒830 久留米市旭町67 久留米大学医学部第1外科
受理年月日
1986年2月12日
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