特集
高齢者消化器癌手術における侵襲範囲とリスクファクター
大柳 治正, 具 英成, 金丸 太一, 斎藤 洋一
神戸大学医学部第1外科
高齢者消化器外科手術における侵襲範囲やリスクファクターを,65歳以上を高齢者として検討し,以下の結果を得た.
教室で18年間に取扱った高齢者は811例で,全消化器外科症例の29.6%を占めた.術前合併症はリスクファクターではあるが,むしろ手術術式の選択の指標になった.高齢者が対照群より有意に多い術後合併症は,肝機能障害32.3%,創感染10.0%,肺合併症8.9%,腎機能障害6.0%,心合併症5.3%などであった.術後合併症発生には年齢,栄養状態や免疫能の低下,術中出血量や手術時間が関係した.
また侵襲範囲としては,高齢者は若年者の中等度侵襲が既に大侵襲となるほど,特異的かつ過敏に反応しているものの,大手術操作にも一応は反応しうる.しかし,術前よりリスクファクターが多く,retrospectiveにみて術後合併症発生頻度も高いことは,高齢者に対する侵襲が可及的軽度であることが望ましいことを示している.
索引用語
高齢者消化器癌手術, 侵襲範囲, リスクファクター
日消外会誌 19: 2083-2087, 1986
別刷請求先
大柳 治正 〒650 神戸市中央区楠町7-5-2 神戸大学医学部第1外科
受理年月日
1986年6月16日
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