高齢者の肝切除術における侵襲範囲と術後合併症―悪性腫瘍を対象として―

早川　直和, 二村　雄次, 神谷　順一, 山瀬　博史, 岡本　勝司, 長谷川　洋, 塩野谷　恵彦

名古屋大学医学部第1外科

　悪性腫瘍に対する高齢者肝切除術をより安全に行うことを目的として，1985年12月までに当科で扱った悪性腫瘍による肝切除症例90例を対象として用い65歳以上の高齢者群（A群と略）27例，65歳未満の非高齢者群（B群と略）63例に分け比較検討した．侵襲範囲はAB両群間に有意差はなく，三区域切除以上の拡大手術も年齢と関係なく行われた．高齢者は術前に各種機能障害を合併する例が多く，術後は精神障害や呼吸器合併症などの術後合併症の発生率が高かった．しかし，両群間の死亡率（A群：7％，B群：11％）に有意の差はなかった．悪性腫瘍に対する高齢者肝切除術では，術前機能障害や術後合併症に留意すれば，非高齢者と同程度の手術が可能であった．

索引用語
高齢者手術, 肝切除術, 悪性腫瘍

別刷請求先
早川　直和　〒466　名古屋市昭和区鶴舞町65　名古屋大学医学部第1外科

受理年月日
1986年6月16日

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