原著
直腸癌の術前補助化学療法―FT-207直腸内投与の試み―
林田 啓介, 磯本 浩晴, 白水 和雄, 梶原 賢一郎, 福永 淳治, 小畠 敏生, 土田 勇, 小野 真一, 山内 胖, 掛川 暉夫, 弓削 啓仁1)
久留米大学医学部第1外科, 社会保険田川病院外科1)
直腸癌55例に対し手術までの待機期間を利用してFT-207直腸内投与を試みた.その結果,末梢血・腫瘍・リンパ節の5-Fu濃度は10 g未満の少ない投与量でも平均0.05 mcg程度は維持され,投与量が増すとともに高い濃度が得られた.腫瘍への直接効果は,組織学的にみると30 g以上の投与が必要と考えられた.治癒切除例を対象としたFT-207術前投与群と非投与群のretrospectiveな検討から,両者間の5生率には有意差なかったが,再発についてはn0群でFT-207群が有意(p<0.05)に少なかった.また,投与量についてはFT-207群のなかで非再発例の平均投与量が15.1 g,再発例8.9 gと差(p<0.1)がみられたことから,補助療法として効果を期待するには15 g以上の投与が必要と考えられた.
索引用語
直腸癌の術前補助化学療法, FT-207直腸内投与, FT-207, 5-Fu濃度, 直腸癌の予後
日消外会誌 20: 1067-1075, 1987
別刷請求先
林田 啓介 〒830 久留米市旭町67 久留米大学医学部第1外科
受理年月日
1986年9月3日
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