特集
ATPを用いた化学療法の抗腫瘍効果増強に関する実験的研究
牟礼 勉, 岩本 末治, 木元 正利, 瀬尾 泰雄, 長野 秀樹, 清水 裕英, 山本 康久, 佐野 開三, 北川 隆之1)
川崎医科大学消化器外科, 国立予防衛生研究所化学部1)
マウス培養細胞を用い,ATPの癌細胞および正常細胞の増殖,膜透過性におよぼす影響を検討した.さらに本物質の癌化学療法への応用を目的として,各種抗癌剤との併用実験を行った.ATPにより,癌細胞では著明な細胞膜透過性の亢進,cell viabilityの低下がみられたのに対し,非癌化細胞におけるこれらの変化は軽微で,ATP作用は癌細胞に特異的であった.ATP処理後の癌細胞における各種抗癌剤の抗腫瘍効果は,5-FU,ADM,MMC,ACNUでは相加的,VCRでは相乗的に増強した.また,正常細胞に対する抗癌剤の細胞毒性はATPの併用により増強されなかった.これらの結果からATPを用いることにより,選択的癌化学療法が期待できるものと思われた.
索引用語
ATP, 細胞膜透過性, 癌化学療法
日消外会誌 21: 1225-1229, 1988
別刷請求先
牟礼 勉 〒701-01 倉敷市松島577 川崎医科大学消化器外科
受理年月日
1987年10月12日
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