原著
膵嚢胞性疾患の鑑別診断―特に嚢胞内容液の分析を中心として
長堀 薫, 河野 哲夫, 在原 文夫, 松本 由朗, 菅原 克彦, 横井 隆志1), 西山 潔1), 土屋 周二1), 大秋 美治2), 新明 紘一郎3), 洲崎 兵一3)
山梨医科大学第1外科, 横浜市立大学第2外科1), 同 第2病理2), 横須賀共済病院外科3)
過去20年間の自験膵嚢胞性疾患20例中,仮性嚢胞は9例,真性嚢胞は11例であった.腹痛は仮性嚢胞の全例にみられたのに対し,真性嚢胞では6例が腹痛を伴わない腹部腫瘤を主訴とした.血清アミラーゼ値は仮性嚢胞の9例中8例が229~1,580 IU/lと高値を示した.嚢胞の存在診断にはCTおよび超音波検査が有用であったが,質的診断には不十分であった.嚢胞内容液のアミラーゼ値は真性嚢胞が4.398±9.131 IU/lであるのに対して仮性嚢胞では199,360±135,581 IU/lと著しく高値であった.また,細胞診では悪性例6例中4例がclass IV,またはclass Vであった.内容液のCEA値は,悪性例では50,278±83,948 ng/mlで,良性例の256±141 ng/mlと比べ有意に高値を示した.以上より,嚢胞内容液のアミラーゼ値,細胞診,CEA値は膵嚢胞性疾患の質的診断に有用と考えられた.
索引用語
膵嚢胞, 膵仮性嚢胞, 膵真性嚢胞, 膵嚢胞内容液
日消外会誌 21: 1269-1276, 1988
別刷請求先
長堀 薫 〒409-38 山梨県中巨摩郡玉穂町下河東1110 山梨医科大学第1外科
受理年月日
1988年1月13日
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