特集
肝障害例における術後肝不全およびmultiple organ failureの病態と対策
野口 孝, 東口 高志, 横井 一, 川原田 嘉文, 水本 龍二
三重大学第1外科
最近10年半に教室で経験した消化器外科手術症例1983例中肝不全およびmultiple organ failure(MOF)発生例はそれぞれ38例1.9%,35例1.8%であり,術前肝障害合併例特に肝硬変合併例に高率に認められており術式別では肝切除が最も高率であった.肝不全が術後1週以内の早期に発生したものの多くは術式過大によるものであり,術前の高度肝障害例および術後感染症や消化管出血を伴ったものでは4週以降の後期にみられることが多くかつMOFを高率に合併し救命率は最も低率であった.したがって各種肝機能を総合的に判定して適切な術式を選択する必要があるが,凝固線溶系機能の異常を有する症例に対しては術前の部分的脾動脈塞栓術が有効であり,さらに詳細な栄養管理や多臓器管理を行うことによって長期予後の向上が得られる.
索引用語
手術危険度, 肝予備能, 部分的脾動脈塞栓術
日消外会誌 22: 1039-1042, 1989
別刷請求先
野口 孝 〒514 津市江戸橋2-174 三重大学医学部第1外科
受理年月日
1988年10月12日
 |
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|