原著
多発早期胃癌の臨床病理学的検討
吉川 時弘, 北村 正次, 荒井 邦佳, 粟根 康行*, 神前 五郎
東京都立駒込病院外科, *現, 東京都立府中病院外科
1986年末までに当科で経験した早期胃癌492例中,多発早期胃癌(多発癌)症例75例を対象に,多発癌の診断,外科治療上の問題を検討した.多発癌はA,M領域に好発し,早期胃癌の15.2%に認められた.多発癌の頻度は高齢者ほど高く,また,高齢者では分化型癌の多発,病巣を多数有する症例が多かった.多発癌の術前および摘出標本上の肉眼診断率はそれぞれ52%,73%であり,多発と術前診断できた症例においても,病巣数が組織診断と一致したものは64%であった.多発胃癌では副癌巣の大半がIIb微小癌のため,肉眼診断は困難なことが多い.したがって,多発癌症例では肉眼診断できない副癌巣を考慮し,術式,切除線を決定する必要がある.
索引用語
多発早期胃癌, 早期胃癌, 多発胃癌, 多発早期胃癌の診断と治療
日消外会誌 22: 1062-1066, 1989
別刷請求先
吉川 時弘 〒940 長岡市福住2-1-5 新潟県厚生連中央綜合病院外科
受理年月日
1989年1月11日
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