原著
実験食道癌の発生に及ぼすアルカリ性逆流性食道炎の影響
東儀 公哲
島根医科大学第2外科教室(主任:中村輝久教授)
ラットの胃全摘後,逆流を起こしやすい吻合法としてのBillroth-II法と,起こしにくいRoux-Y法を作成し,N-amyl-N-methylnitrosamine(以下AMN)実験食道癌の発生に及ぼす逆流性食道炎の影響を検討した.その結果,発癌率(扁平上皮癌)は,AMN開始を胃全摘に先行させる実験ではBillroth-II法92.6%,Roux-Y法31.3%,対照50.0%であり,胃全摘をAMN開始に先行させる実験でも,それぞれ93.5%,35.3%,35.0%と,Billroth-II法に有意に高率であった.部位別では,癌は食道炎の高率な下部食道に多く,食道炎のない上部に少なかった.食道には乳頭腫も発生したがこれと食道炎,癌腫は負の相関にあった.以上より,実験食道癌の発生にアルカリ性逆流性食道炎はpromoterとして作用したものと考えられた.
索引用語
N-amyl-N-methylnitrosamine, 実験食道癌, 逆流性食道炎と発癌
日消外会誌 22: 1977-1986, 1989
別刷請求先
東儀 公哲 〒693 出雲市塩冶町89-1 島根医科大学第2外科
受理年月日
1989年3月8日
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