原著
胃癌の粘膜下層浸潤における粘膜筋板の役割
池口 正英, 米川 正夫, 太田 道雄, 角 賢一, 牧野 正人, 木村 修, 西土井 英昭, 貝原 信明, 古賀 成昌
鳥取大学第1外科
sm胃癌160例(166病変)を対象とし,粘膜下層への癌深達と粘膜筋板の厚さとの関係を検討した.癌の粘膜下層深達程度の指標として,水平方向への広がりの程度を粘膜下癌巣の応がり(sm面積)と粘膜内癌巣の広がり(m面積)の比(sm/m)で表わし,垂直方向への深達程度を表層型(sm 1),中間型(sm 2),深部深達型(sm 3)の3群にわけて区別した.癌巣周囲の粘膜筋板の厚さが,120.1 µm以上ではsm/mは平均0.12,60.1~120 µmでは0.30に対し60 µm以下では0.56と有意に高値であった.粘膜筋板が60 µm以下ではsm 3が70%,120.1 µm以上ではsm 1が50%を占めた.幽門腺領域の分化型癌に限った検討でも同様の結果であった.以上のことから,癌の壁深達に粘膜筋板が何らかの障害となっている可能性が示唆された.
索引用語
胃粘膜筋板, 胃粘膜下層, 癌の壁深達, 胃癌
日消外会誌 22: 2333-2337, 1989
別刷請求先
池口 正英 〒683 米子市西町86 鳥取大学医学部第1外科
受理年月日
1989年5月8日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|