原著
過酸化水素法による胃壁内リンパ管の検討
孝冨士 喜久生, 橋本 謙, 児玉 一成, 吉田 力, 武田 仁良, 掛川 暉夫
久留米大学第1外科
胃癌症例38例を対象に新鮮切除胃標本を過酸化水素法にて膨脹させ,胃壁内リンパ管,とくに粘膜固有層表層毛細リンパ管を肉眼的,組織学的に検討し,以下の結果を得た.
粘膜面からの肉眼的観察で白色の小斑が十二指腸輪状ヒダ部,幽門腺および中間帯領域小弯部(幽門腺萎縮と腸上皮化生が高度な部),胃底腺領域皺襞部に多数観察され,組織学的にこの小斑は過酸化水素法により膨脹された粘膜固有層の毛細リンパ管が密に分布する部位と一致した.活性炭に切除標本を浸漬させた後過酸化水素法で処理した例では,小斑部毛細リンパ管を含めリンパ管内に活性炭の流入が認められ,小斑部毛細リンパ管が物質の吸収に関与しているものと思われた.
索引用語
胃壁内リンパ管, 胃粘膜固有層毛細リンパ管, 過酸化水素法, カタラーゼ
日消外会誌 22: 2576-2581, 1989
別刷請求先
孝冨士喜久生 〒830 久留米市旭町67 久留米大学医学部第1外科
受理年月日
1989年6月7日
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