胃癌における腹部大動脈周囲リンパ節郭清の適応

酒徳　光明, 橘川　弘勝, 平野　誠, 松　智彦, 石黒　栄紀, 斉藤　裕, 龍沢　俊彦

厚生連高岡病院外科

　胃癌における腹部大動脈周囲リンパ節郭清の適応につき，1983～1987年の胃癌肉眼的治癒切除例342例，腹部大動脈周囲リンパ節郭清例55例を対象に検討した．腹部大動脈周囲リンパ節転移は肉眼的進行程度Stage IIIから認められた．Stage III，IV症例をS₂以上かつN₂以上の群とそれ以下の群に分け腹部大動脈周囲リンパ節転移を検討した結果，前者は10/25，後者は1/22の転移率であり，有意差（p＜0.05）を認めた．S₂以上かつN₂以上で腹部大動脈周囲リンパ節転移陽性例の予後はきわめて不良であったが，再発形式は腹膜播種が多かった．術後入院期間は胃全摘術では腹部大動脈周囲リンパ節郭清群が69.4±29.1日，R₃リンパ節郭清群が53.1±12.2日であり，前者は有意に延長していた（p＜0.01）．腹部大動脈周囲リンパ節郭清の適応はS₂以上かつN₂以上で腹膜播種にたいする積極的な集学的治療の可能な症例であると考えられた．

索引用語
胃癌, 腹部大動脈周囲リンパ節郭清

別刷請求先
酒徳　光明　〒933　高岡市永楽町5-10　厚生連高岡病院外科

受理年月日
1989年9月19日

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