顕微鏡的網膜内癌巣を伴った胃癌症例の検討

西土井　英昭, 角　賢一, 水沢　清昭, 米川　正夫, 太田　道雄, 牧野　正人, 木村　修, 貝原　信明, 古賀　成昌

鳥取大学第1外科

　術後の組織学的検査により偶然に発見される顕微鏡的網膜内癌巣（以下，肉眼的腹膜転移（large P）に対してsmall pと仮称）を伴った胃癌34例を臨床病理学的に検討した．その結果，small pは第1群所属リンパ節近傍に高率に認められ，その発生機転としては大小網への播種性転移と，リンパ管または血管系を介する2大経路が推察された．small p症例の遠隔成績は再発死亡22例中14例（63.3％）が腹膜再発であり，その5年生存率は33.4％と同stageのsmall pを伴わない胃癌の53.7％より有意に低く（p＜0.05），むしろ，P₁因子のみによる非治癒切除例の5生率に近かった．以上より，small pは肉眼的腹膜播種の初期像と考えても良いと思われ，その術後成績から，small p症例はP₁症例と同等に扱われるのが望ましく，術後のfollow upに際しては治癒切除といえども腹膜再発の可能性を十分考慮する必要がある．

索引用語
peritoneal metastasis of gastric cancer, microscopic omental metastasis, peritoneal recurrence

別刷請求先
西土井英昭　〒683　米子市西町36-1　鳥取大学医学部第1外科

受理年月日
1989年9月19日

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