免疫能からみた膵癌に対する術中照射療法の意義

山上　裕機, 谷村　弘, 角田　卓也, 谷　眞至, 岩橋　誠, 井上　正也, 川口　富司, 東　芳典, 青木　洋三

和歌山県立医科大学消化器外科

　術中照射療法が免疫能に及ぼす影響，ことにNKおよびLAK活性の変動に関する報告は皆無である．総線量2,000～3,000 cGyの分割外部照射を施行した6例（直腸癌3例，食道癌2例，胆管癌1例）を対照として，3,000～3,500 cGyの術中開創照射を施行した切除不能膵癌7例の免疫能を比較した結果，NK活性は，分割照射では平均8％活性が低下するのに対し，術中照射では照射後に7％も上昇した．また，LAK活性は，分割照射では平均26％低下したが，術中照射では軽度抑制されたにすぎなかった．IFN-γによるキラー活性もむしろ術中照射後に9％の上昇を認めた．IAP値は術中照射では平均131 µg/mlの上昇に対し，分割照射では215 µg/ml上昇した．しかし，PHA幼若化率はいずれも著変を認めず，OKT4/8比は他の免疫パラメーターとは反対の変動を示した．以上より，1回大量照射法は開腹手術を施行しているにもかかわらず，免疫反応を低下させず，むしろ回復させる方向に作用することが明らかとなった．

索引用語
intraoperative radiation, unresectable pancreatic carcinoma, immunological parameter of the pancreas cancer, natural killer cell activity, lymphokine-activated killer cell activity

別刷請求先
山上　裕機　〒640　和歌山市七番丁27　和歌山県立医科大学消化器外科

受理年月日
1989年10月11日

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