症例報告
肝のInflammatory pseudotumorの1切除例
今里 雅之, 林 恒男, 田中 精一, 上田 哲哉, 竹田 秀一, 山本 清孝, 武藤 康悦, 磯部 義憲*, 上野 恵子*, 山本 雅一**, 小林 誠一郎**, 羽生 富士夫**
中山記念胃腸科病院, *東京女子医科大学消化器病センター放射線科, **東京女子医科大学消化器病センター外科
症例は50歳男性で,主訴は心窩部痛である.胃潰瘍の診断とともに,超音波検査で肝右葉に蜂巣状内部構造を有する比較的境界鮮明な直径7 cmの腫瘤を認めた.Computed tomography(CT)では腫瘤は低吸収域で造影後には菊花状で各花弁にあたる部位の辺縁が濃染される特異な像を呈した.腹部血管造影では,腫瘍血管や圧排所見はないが毛細管相で腫瘍濃染像を認めた.腫瘍マーカーは正常であった.腫瘍の穿刺吸収細胞診では,白色の濃汁の中に線維性組織が吸引されたが炎症性変化のみで悪性所見は認めないため厳重な経過観察とした.2年後,画像的に腫瘤の増大が認められ,悪性腫瘍が否定できないために拡大肝右葉切除術を施行した.病理学的にinflammatory pseudotumorと診断された.肝原発の本疾患は文献上17例の報告しかなく,経過を追い増大を認めた症例はいまだ報告されていない.ここに文献的考察を加え報告する.
索引用語
Inflammatory pseudotumor of the liver
別刷請求先
今里 雅之 〒192 八王子市子安町3-18-1 中山記念胃腸科病院
受理年月日
1989年10月11日
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