症例報告
肝原発性yolk sac tumorの1例
鳴海 俊治, 百田 行雅, 須貝 道博, 佐々木 睦男, 大沼 裕行1), 松田 恵司1), 伊藤 恭雄1)
弘前大学医学部第2外科(指導:小野慶一教授), むつ総合病院外科1)
肝原発yolk sac tumorはまれな疾患で現在までの報告は3例のみだが,27歳女性の1例を経験した.主訴は右側腹部痛,右肩方散痛で腹部ultrasonography(以下US)にて肝膿瘍を指摘された.生化学検査ではα-fetoprotein(以下AFP)とlactate dehydrogenase(以下LDH)が非常に高値を示した.吸引細胞診で肝細胞癌が強く疑われ,肝右葉切除を施行した.術後病理組織検査で肝原発yolk sac tumorと診断された.術後4か月目に咳嗽と腹部腫瘤を訴え,computed tomographyで右胸水と大網転移が認められ,AFPの再上昇も認めた.Cisplatin,Vinblastin,Bleomycinによる化学療法(PVB)で胸水の消失,転移の著明な縮小,AFPとI型優位のLDHの低下をみた.しかしその7か月後,AFPとLDHの急増,転移の増大,腹水が発現し,術後1年4か月目で肝不全にて死亡した.本症の診断にはUSと血管過影が有用で,AFPとI型優位のLDHは病状をよく反映した.治療はPVBによる化学療法が有効であった.
索引用語
yolk sac tumor, α-fetoprotein
別刷請求先
鳴海 俊治 〒036 弘前市在府町5 弘前大学医学部第2外科
受理年月日
1989年10月11日
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