症例報告
大量の分泌性下痢を呈した直腸絨毛腫瘍の1例:Prostaglandin E2およびCyclic AMPとの関連について
徳田 裕, 長井 快舟, 水谷 郷一, 花上 仁, 上野 文昭1), 三富 利夫1)
東海大学医学部大磯病院外科, 同 内科1), 第2外科2)
Villous tumorに伴う分泌性下痢の発生機序は,いまだ解明されていない.われわれは多量の分泌性下痢により,腎前性の急性腎不全および電解質異常を呈した症例を経験した.症例は75歳の女性.12×10 cm大の直腸villous tumorがあり,1,100~3,500 gm/day(Na 149 mEq/l,K 34.5 mEq/l,330 mOsm/kg)の水様性下痢を認めた.Indomethacinの投与により,分泌液中のprostaglandin E2(PGE2)の減少に伴い排泄量の減少を認めた.保存的に腎不全を改善した後,腹会陰式直腸切断術を施行した.術後経過は良好で人工肛門よりの水様性下痢は認めなかった.
下痢の発生機序を明らかにする目的で腫瘍組織および正常直腸粘膜のPGE2ならびにcyclic AMPの測定を行った.腫瘍組織中のPGE2含有量は正常直腸粘膜に比べて低値であったが,cyclic AMPは腫瘍組織が正常粘膜に比べて高値であった.したがって,本症の発生に亢進したadenylate cyclase活性の関与が考えられた.
索引用語
villous tumor, secretory diarrhea, cyclic AMP
別刷請求先
徳田 裕 〒259-11 伊勢原市望星台 東海大学医学部第2外科
受理年月日
1989年10月11日
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