肝硬変症に合併した高度凝固線溶系機能異常に対する部分的脾動脈塞栓術の効果と肝細胞癌切除への応用

横井　一, 山際　健太郎, 東口　高志, 野口　孝, 川原田　嘉文, 水本　龍二

三重大学第1外科

　脾機能亢進症を合併し高度の凝固線溶系機能異常を有する肝硬変症に対し，部分的脾動脈塞栓術（PSE）を行ってその効果を検討し，さらに肝細胞癌に対する肝切除に応用して以下の結果を得た．1）脾機能亢進症に対するPSEの効果：16例の肝硬変症にPSEを施行し著明な凝回線溶系機能の改善を得た．しか梗塞率70％以下では1か月後にはその効果は消失した．梗塞率70％以上ではPSE後1年でもその効果は持続し，脾容積も縮小したが，梗塞率90％以上の5例中2例に脾嚢胞の発生を認めた．2）肝癌切除成績：術前にDIC危除群の判定基準に該当した9例（PSE非施行例）の肝切除では，4例（44.4％）が術後DICを発生して6か月以内に肝不全で死亡した．また生存例でも遠隔期には脾腫が出現し肝再生も不良であった．一方，DIC危険群6例を含む9例に対しPSE施行後肝切除を行ったところ，全例術後経過良好で，かつ術後1年目でも良好な凝固線溶系機能や脾の縮小効果を持続し，肝再生も良好な傾向を示した．

索引用語
partial splenic embolization, liver cirrhosis, coagulation-fibrinolysis system, hepatectomy, liver regeneration

別刷請求先
横井　一　〒514　津市江戸橋2-174　三重大学医学部第1外科

受理年月日
1989年10月11日

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