症例報告
巨大な上腸間膜静脈―下大静脈短絡による猪瀬型肝性脳症の1手術治験例
馬庭 宣隆, 丸林 誠二, 八幡 浩, 福田 康彦, 浅原 利正, 土肥 雪彦
広島大学第2外科
非常にまれな巨大な門脈一大静脈シャントにより,猪瀬型肝性脳症を呈した症例に,シャント切除術を行い良好な結果を得た.患者は55歳の男性で肝硬変と脾腫を伴い総ビリルビン2.6 mg/dl,ICGR1544.5%白血球1,800,血小板6.2×104であった.シャントは上腸間膜静脈より右腎静脈下の下大静脈に流入し,血管径は3.4 cmで右後腹膜腔全体に屈曲蛇行する巨大なものであった.手術は脾摘出術とシャント血管切除を行った.術中門脈圧に変化を認めず門脈血流は向肝性となった.術後,白血球,血小板は著明に増加し,アンモニア,ICG,胆汁酸,エンドトキシン等の諸検査成績も改善した.また,門脈血栓症を併発したが抗凝固療法によリコントロールできた.胃周囲血行郭清術はしなかったが,食道静脈瘤の進展はみていない.今後,門脈大静脈シャント症例には,肝不全,食道静脈瘤,門脈血栓症の発症に注意して積極的に切除すべきである.
索引用語
spontaneous hepatic encephalopaty, porto-systemic shunt, portal thrombosis
別刷請求先
馬庭 宣隆 〒739-06 大竹市玖波4-1-1 国立大竹病院外科
受理年月日
1989年11月8日
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