症例報告
虚血性小腸狭窄の1例
西村 理, 松末 智, 小泉 俊三, 柏原 貞夫
天理よろづ相談所病院腹部一般外科
腸管膜動脈の循環障害に起因する小腸狭窄の1例を経験した.
症例は61歳男,腹部大動脈再建術後に下痢,腹痛,嘔吐を呈し,腹腔内膿瘍と診断されて当科に入院した.排膿術を施行するも症状の改善を得ず,腸閉塞症状が出現した.高カロリー輸液下に諸検査を行い,血管造影で上腸管膜動脈根部の狭窄を認めた.虚血が関与する腸閉塞の診断で開腹すると,回腸の一部が索状に狭窄し,これに沿う腸管膜は萎縮していた.狭窄部を切除し,端々吻合して症状の消失をみた.病変部は肉眼的に瘢痕状で,組織学的には腸管全層にわたる線維化と腸管膜動脈の閉塞性変化を認めた.
本症は予後不良と言われるが,その改善のためには診断から治療にわたる栄養管理をはじめ,適切な全身管理が肝要である.
索引用語
small intestine, ischemia of the small intestine, stenosis of the small intestine
別刷請求先
西村 理 〒632 天理市三島町200 天理よろづ相談所病院腹部一般外科
受理年月日
1989年11月8日
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