早期食道癌20例の検討―とくにsm早期癌の治療方針について―

天満　和男, 阿保　七三郎, 北村　道彦, 橋本　正治, 泉　啓一, 神谷　彰, 下間　信彦, 山崎　泰男

秋田大学医学部第2外科

　早期食道癌20例（mm癌4例，sm癌16例）の組織像，治療法，予後などを解析し早期癌の治療指針につき検討を加えた．症例は男性18例，女性2例で深達度による背景因子の差はなかったが，sm癌では12例（75％）に症状を認めたのに対し，mm癌ではわずかに1例（25％）のみであった．病変部の肉眼分類ではmm癌は予後のよいとされるO-II型に分類され，sm癌はより予後の悪いO-I型に属するものが多く，多発癌が4例見られた．主病巣最大長径の平均はsm癌2.l cm，mm癌0.9 cmとmm癌が小さい傾向であった．病理組織学上脈管内侵襲はsm癌に7例，mm癌にも1例見られ，すべてリンパ管侵襲であった．mm癌に再発例はなく，sm癌に2例の再発を見たが，早期癌の術後5年生存率は75％で全国集計と同等であった．mm癌とsm癌では病理組織学的性格が大きく異なり，それが予後の差として反映されていた．sm早期癌には進行癌と同様の術式および集学的治療が必要であると考える．

索引用語
early esophageal cancer, diagnosis of early esophageal cancer, histopathological findings of early esophageal cancer, prognosis of early esophageal cancer, therapeutic policy to early esophageal cancer

別刷請求先
天満　和男　〒010　秋田市本道1-1-1　秋田大学医学部第2外科

受理年月日
1989年12月13日

PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です