深達度別にみた早期胃癌治癒切除例の臨床病理学的検討

大下　裕夫, 田中　干凱, 伊藤　隆夫

岐阜市民病院外科

　早期胃癌治癒切除231例について深達度別に臨床病理学的検討を行った．1）粘膜癌（m癌）128例（55.4％），粘膜下層癌（sm癌）103例（44.6％）であった．2）リンパ節転移は早期胃癌の9.5％，m癌の16％，sm癌の19.4％に認められた．3）sm癌では，肉眼型はII a＋II c混合型，組織型は未分化型，リンパ管侵襲陽性の症例にリンパ節転移頻度が高かった．4）腫瘍径の増大に伴ってリンパ節転移率が上昇したが，1.0 cm未満の症例ではリンパ節転移はみられなかった．5）早期胃癌全体の5年，10年生存率はそれぞれ97.9％，96.2％であった．m癌の5年，10年生存率は100％であったが，sm癌ではそれぞれ95.2％，91.5％であった．また，リンパ節転移陽性sm癌の5年，10年生存率は87.6％で，転移陰性例の97.0％，92.7％と比べると不良であった．6）現時点では早期胃癌に対しても第2群リンパ節郭清を行うべきと考えられた.

索引用語
early gastric cancer, degree of depth of invasion, lymph node metastasis

別刷請求先
大下　裕夫　〒500　岐阜市鹿島町7-1　岐阜市民病院外科

受理年月日
1989年12月13日

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