原著
コレステロール胆石溶解剤methyl tert-butyl etherの結石溶解作用に及ぼすfluorocarbonの効果に関する研究
井上 茂章, 遠藤 正章, 志田 正一, 仲地 広美智, 佐々木 睦男, 小野 慶一, 西沢 諒一*, 土田 博**
弘前大学医学部第2外科, *青森市民病院外科, **国立弘前病院外科
コレステロール系直接胆石溶解剤として迅速効果を期待できるmethyl tert-butyl ether(MTBE)は胆汁と混和しないため(比重0.747),結石との接触や溶解効果が不十分となりがちである.増量すれば,胆道からさらに腸管内へ流出し,嘔気,嘔吐,呼吸困難,嗜眠,十二指腸炎などをひきおこすため,十分な量を使用できることは少ない.そこで,代用血液として開発されたフロロカーボン(Fl)を,胆汁との置換,およびMTBE,と結石との接触面積増加をめざす溶媒として導入した.FlはMTBEと完全に混和し,その混液(MTBE/Fl=0.5 ml/1.5 ml)は,in vitroで137 mgの混合石重量を3時間で91 mg(66.4%)へと減少せしめた.一方,2 mlのMTBEでは胆汁が1ml存在すると,403 mgの混合石を3時間で327 mg(81.1%)へと溶解せしめただけであった.FlはMTBEにとってvolume expanderとなり,結石との接触性を高めるものと考えられる.
索引用語
directly cholelitholytic agent, methyl tert-butyl ether, fluorocarbon, solvent mixture, stone-solvent contact
別刷請求先
井上 茂章 〒036 弘前市在府町5 弘前大学医学部第2外科
受理年月日
1989年12月13日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|