症例報告
膵実質浸潤を示した粘液産生膵癌の1例
町支 秀樹, 倉田 稔, 須崎 真, 酒井 秀精
紀南病院外科
粘液産生膵癌は一般に予後良好とされているが,膵実質に浸潤した症例では再発率も高い.最近,われわれは術後3年6か月目に死亡した粘液産生膵癌の1例を経験したので報告するとともに本邦報告例45例を集計し若干の考察を加えた.症例は59歳男性,左上腹部痛および背部痛を主訴に来院.超音波検査所見,computed tomography検査所見,内視鏡的逆行性膵胆管造影所見にて膵体部癌を疑い,膵全摘術を施行.術中,膵管造影時に膵管より多量の粘液の流出を認め,粘液産生膵癌と診断した.病理組織所見では乳頭状腺癌で一部膵実質浸潤を認めた.術後経過は良好で退院後,外来にて経過観察中,腫瘍マーカーの著明な上昇を認め精査のために再入院.入院後,呼吸困難の出現,増悪を認め死亡した.本邦報告例中,膵実質浸潤例は39例中16例(41.0%)でこの16例中4例(25.0%)が転移死亡し,非実質浸潤例では転移死亡はなく,膵実質浸潤が本症の予後不良因子の一つと考えられた.
索引用語
mucin-producing pancreatic cancer, invasion of the pancreatic parenchyma, papillary adenocarcinoma of the pancreas cancer
別刷請求先
町支 秀樹 〒519-52 三重県南牟婁郡御浜町阿田和4750 紀南病院外科
受理年月日
1989年11月8日
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