副腎皮質癌を合併した大腸腺腫症の1例

森　和弘, 山口　明夫, 太田　長義, 黒阪　慶幸, 石田　哲也, 竹川　茂, 藪下　和久, 西村　元一, 小坂　健夫, 宮崎　逸夫, 古谷　正晴^1）, 田中　猛夫^1）

金沢大学第2外科, 福井赤十字病院外科^1）

　大腸腺腫症に副腎皮質癌を合併した1例を経験した．症例は，19歳の男性で主訴は，上腹部痛であった．昭和62年4月右副腎腫瘍の診断で右副腎摘出術が施行され，良性の副腎皮質腺腫と診断された．昭和63年6月副腎腫瘍の腹腔内再発で再手術が施行された．同年7月再々手術目的に当科入院，Gardner症候群および副腎癌肝転移の診断で8月16日開腹手術を施行した．右横隔膜下，尾状葉，右副腎局所の再発巣を切除し，結腸全摘・回腸直腸吻合術を施行した．組織学的検索の結果，副腎癌の腹腔内再発と診断された．患者は術後6か月目に副腎腫瘍再発により死亡した．
　大腸腺腫症と副腎癌の合併は，文献上2例の報告をみるのみであり，本例は3例目とおもわれ，きわめてまれであるので，ここに報告した．

索引用語
adenomatosis coli, Gardner's syndrome, adrenocortical carcinoma

別刷請求先
森　和弘　〒920　金沢市宝町13-1　金沢大学医学部第2外科

受理年月日
1989年12月13日

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