高度な直腸狭窄を伴ったpelvic lipomatosisの1症例

田中　克浩, 谷木　利勝, 仁木　俊助, 福本　泰三, 原内　大作, 田淵　寛, 住友　正幸, 佐尾山　信夫, 原田　邦彦, 下江　安司^1）, 苛原　稔^2）, 門田　康正

徳島大学第2外科, 同心臓血管外科^1）, 同産婦人科^2）

　Pelvic lipomatosisの1例を経験した．症例：32歳，女性．主訴：便秘．肛門縁より10 cm口側に狭窄部下端を触知し狭窄部より口側への直腸鏡の挿入は不可能であった．粘膜面に不整はなく，生検では正常の直腸粘膜であった．膀胱鏡検査では異常を認めなかった．注腸造影でRa，Rsに長さ約10 cmの全周性の高度狭窄を認めたが明かな偏位は認めなかった．Computed tomographyとmagnetic resonaunce imageでは腫大した子宮と左卵巣に低吸収域を認め，直腸周囲に厚さ約2 cmの低吸収域を認めた．腹部エコーにて子宮筋腫と両側卵巣嚢胞を認めたが直腸狭窄と関係ないと判断した．手術所見：直腸，子宮，卵巣は強く癒着しており直腸低位前方切除，単純子宮全摘，両側付属器摘除術を行った．病理所見：直腸粘膜に著変なく直腸周囲には厚い脂肪が認められた．この脂肪は正常の脂肪組織であり，悪性所見はなく線維化や炎症所見は乏しかった．

索引用語
pelvic lipomatosis with benign rectal stenosis

別刷請求先
田中　克浩　〒774　阿南市宝田町川原2　阿南市医師会中央病院外科

受理年月日
1989年12月13日

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