Multiple slice dynamic computed tomography scanによる血流動態からみた膵疾患の診断と手術適応の決定

青木　洋三, 谷村　弘, 川嶋　寛昭, 佐々木　政一, 上田　耕臣, 嶋田　浩介, 川口　富司, 杉本　恵洋, 植阪　和修, 福　昭人, 吹上　理

和歌山県立医科大学消化器外科

　膵健常例，各種膵疾患計103例を対象に，table sliding rapid sequence scanを応用したmultiple slice dynamic computed tomography（CT）scanを試み，膵疾患に対する診断能と手術方針決定における有用性を検討した．
　急性膵炎，慢性膵炎では，病変がびまん性であれば，time-density（T-D）curveより画像でその特徴像を捉えられた．膵嚢胞では，単純CT上でもその存在を確認できたが，T-D curveでよリー層その特徴を把握できた．膵癌は，腫瘤形成性慢性膵炎との鑑別が重要であるが，本法による造影CTにより，健常部は造影されるのに反し癌は造影されず，腫瘤形成性慢性膵炎では造影初期でこそ癌と類似していたが経時的に腫瘤部にも造影剤が移行することから，100％鑑別できた．膵癌の正診率も，単純CTではT₁は0％，T₂，T₃が75，85％で，T₄ではじめて100％診断できたが，本法により，T₁を含め全例が100％診断可能となった．

索引用語
multiple slice dynamic computed tomography scan, pancreatic cancer, tumor-forming chronic pancreatitis

別刷請求先
青木　洋三　〒640　和歌山市七番丁27　和歌山県立医科大学消化器外科

受理年月日
1989年12月13日

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