原著
原発性肝細胞癌切除例における予後規定因子
瀬川 徹, 井沢 邦英, 松元 定次, 浦 一秀, 江藤 敏文, 元島 幸一, 角田 司, 土屋 凉一
長崎大学第2外科
1970年1月から1988年12月までに経験した原発性肝細胞癌切除例108例の遠隔成績を算出し宿主側,癌腫側,治療面からこれらの予後に影響を与える因子を検討した.108例の累積生存率は1生率67%,3生率30%,5生率28%であった.宿主側ではclinical stage IとIIの間に累積生存率に有意差を認めた.性別,HBs-Agでは生存率に差がなかった.癌腫側因子のうちstage分類ではIとII,IとIIIの間に有意差を認めたがstage IIとIIIでは差がなかった.腫瘍径では5 cm以上で予後が不良であったが,2 cm以下と2~5 cmとの間には有意差がなかった.肝内転移と門脈腫瘍栓の有無は予後に影響を与えた.AFP値と被膜浸潤の有無は累積生存率に差がなかった.治療面では術前TAEは予後に影響を与えず,肝切除術式では肝葉切除例の累積生存率は低かった.肝切離面の癌浸潤の有無により累積生存率に差はなかった.3年以上無再発生存例,5年以上の長期生存例を検討し,長期生存の必要条件としてはclinical stage I,腫瘍径5 cm以下,im0-1,vp0-1があげられた.
索引用語
hepatocellular carcinoma (HCC), cumulative survival rate of HCC, prognostic factor of HCC, macroscopic stage classification of HCC, clinical stage classification of HCC
日消外会誌 23: 1071-1077, 1990
別刷請求先
瀬川 徹 〒852 長崎市坂本町7-1 長崎大学医学部第2外科
受理年月日
1990年1月10日
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