膵頭領域疾患に対する選択的近位迷走神経切離術　兼全胃温存膵十二指腸切除術

渡部　洋三, 津村　秀憲, 中川　敏行, 桜井　秀樹, 佐々木　浩, 飯塚　康彦, 森本　俊雄, 巾　尊宣^＊, 能美　明夫^＊, 小野　精一^＊, 榊原　宣^＊

順天堂大学伊豆長岡病院外科, 順天堂大学第1外科^＊

　われわれは慢性膵炎2例，膵・十二指腸腫瘍5例（悪性腫瘍3例，良性腫瘍2例）に対して選択的近位迷走神経切離術（selective proximal vagotomy：SPV）兼全胃温存膵十二指腸切除術を行った．切除範囲は，幽門輪より1 cm近側から十二指腸の80～90％である．SPVは型のごとく行うが，これによって胃上部小彎側は血行が遮断されるので，左胃動脈は温存し，右胃大網動脈はその根部で切離した．再建はChild変法を6例に，今永変法を1例に施行した．本術式は胃十二指腸球部温存膵十二指腸切除術と比べて，悪性腫瘍に対する手術適応が広く，リンパ節郭清は第二群まで可能である．胃管抜去の時期は平均4.6日で，術後早期の胃内容排出障害は見られなかった．食餌摂取量は多く，体重の回復も良好であった．術後の胃酸分泌能は，基礎酸分泌量および最高酸分泌量ともに著明に減少し24時間胃内pH測定でpH3以上のholding timeは，平均89％と術前よりも高値であった．

索引用語
pancreatoduodenectomy with total stomach preservation, selective proximal vagotomy, chronic pancreatitis, cancer of pancreas and biliary tract

別刷請求先
渡部　洋三　〒410-22　静岡県田方郡伊豆長岡町長岡1129　順天堂大学医学部附属順天堂伊豆長岡病院外科

受理年月日
1990年1月10日

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