症例報告
2個の食道憩室を伴う成人の先天性食道気管支瘻の1例
横田 昌明, 飯田 修平, 戸嶋 暢之, 宇山 一朗, 渡辺 真純, 五味 清英*
練馬総合病院外科, *同 内科
憩室を伴う成人の食道気管支瘻で,成因,発症においてきわめて示唆に富む1例を経験した.症例は68歳男性,中部食道右壁に2個の憩室を認める.肛側憩室より毛髪様に伸びる狭小な瘻管が,4年間のうちにより太く拡張し,右B7区域枝との交通が確認される過程を偶然追跡した.外科的に瘻管を切除し治癒せしめたが,Brunner,唐沢の診断基準より先天性のものと考えた.さらに,術中口側の憩室より肺実質に向かう索状物を認めたが,このような索状物が気道に開存して瘻管となった例,2個の憩室から異時性に食道気管支瘻を認めた症例が報告されており,先天性食道気管支瘻の潜在的な病態ではないかと考えた.加齢に伴う組織の弾力性の消失に喫煙,飲酒,上気道感染など外的要因が加わり,瘻管壁を押し拡げようと働く力が増大した結果,ある時期を境に発症,増悪してくるものと思われる.
索引用語
congenital esophago-bronchial fistula, multiple esophageal diverticula
日消外会誌 23: 1130-1134, 1990
別刷請求先
横田 昌明 〒176 練馬区旭丘2-41 練馬総合病院外科
受理年月日
1990年1月10日
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