症例報告
胃癌を原発とする転移性脊髄硬膜外腫瘍の1例
佐藤 太一郎, 七野 滋彦, 秋田 幸彦, 河村 健雄, 水野 伸一, 鵜飼 克行, 太田 淳, 森岡 淳
八千代病院外科
転移性脊髄硬膜外腫瘍はまれである.とくに,胃癌から脊髄硬膜外へ転移することは余り知られていない.われわれはそのような症例を経験したので,報告し,本邦における報告例を検討した.
58歳,男.1988年9月,不定な腰痛,右下肢痛,および軽度な排尿障害で発症した.この時の単純X線写真では強直性脊椎炎が認められた.脊髄造影では腰部におけるブロックは見られなかった.
1989年1月,腰痛は持続的になり,下肢脱力が起こった.脊髄造影ではL3でブロックが認められた.転移性腫瘍が考えられたので,検査の結果,胃癌が発見された.しかし,両下肢の麻痺が進行したので緊急椎弓切除を行った.術後5か月間,生存した.
わが国において胃癌からの転移性脊髄硬膜外腫瘍は4例が報告されている.術前に胃癌が診断された症例はなく,原発の胃癌に対する根治術が行われた症例は無かった.
索引用語
metastatic tumor, gastric cancer, spinal epidural tumor
日消外会誌 23: 1144-1148, 1990
別刷請求先
佐藤太一郎 〒446 安城市東栄町1-10-13 八千代病院外科
受理年月日
1990年1月10日
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