症例報告
十二指腸壁内血腫破裂にて幽門および乳頭温存十二指腸亜全摘術を施行した血友病A患者の1例
橋本 俊, 由良 二郎, 清水 保延, 鈴木 達也*, 石川 雅一*, 水野 章*
名古屋市立大学第1外科, 高浜市立病院外科*
血友病Aを有する15歳の男児に腹部鈍的外傷後に発症した十二指腸壁内血腫の1例を経験し,増悪する腹部所見と進行する貧血および腹部CT所見より開腹術を施行した.病変部は十二指腸ほぼ全体に及ぶ巨大な血腫で後腹膜および腹腔内に穿破していた.穿孔の危険もあり病変部を切除し,かつ生理的な状態に再建するために幽門および十二指腸乳頭を温存した十二指腸亜全摘術を施行した.再建は空腸の断端を後結腸性に挙上し十二指腸球部と端々吻合し,この空腸に縦切開を加え温存した乳頭部を端側に吻合した.術後十二指腸空腸吻合部のビランからの出血をみたが造影所見からは幽門機能はよく保たれており,この術式は今後,十二指腸の良性疾患に有用と考えられた.
索引用語
duodenal hematoma, duodenectomy, hemophilia
日消外会誌 23: 1149-1153, 1990
別刷請求先
橋本 俊 〒467 名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1 名古屋市立大学医学部第1外科
受理年月日
1989年12月13日
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