症例報告
肝細胞癌の肝静脈内腫瘍栓に対するlipiodol併用 動注化学塞栓療法の効果―肝切除例2例の検討―
三好 康雄, 佐々木 洋, 今岡 真義, 柴田 高, 安田 直史, 和田 尚, 永野 浩昭, 石川 治, 古河 洋, 岩永 剛
大阪府立成人病センター外科
今回われわれは,肝静脈内腫瘍栓を有する肝細胞癌2症例に対し,術前に経動脈的lipiodo1 transcatheter arterial chemoembolization(LPD-TAE)を施行し,切除標本にてその効果を組織学的に検討した.その結果,症例1においてはLPD-TAEは著効を奏し,腫瘍栓は完全壊死に陥っていたが,症例2では大部分においてviable(腫瘍細胞が生存可能でかつ増殖しうると判断される状態)であった.両者の差は以下の点であった.1.組織像において症例1は比較的分化度が高く,充実性に増殖していたのに対し,症例2では異型度が強く,豊富な血洞(類洞様血液腔)を有していた.2.血管造影像では,症例2においてのみthread and streaks signが認められた.以上より,血管造影時,thread and streaks signが存在すれば,LPD-TAEの効果が低いこともありうるので,治療効果を推測する際に考慮すべきであると考えられた.
索引用語
hepatocellular carcinoma, tumor embolus in the hepatic vein, transcatheter arterial embolization
日消外会誌 23: 1168-1172, 1990
別刷請求先
三好 康雄 〒537 大阪市東成区中道1-3-3 大阪府立成人病センター外科
受理年月日
1989年12月13日
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